超高精度のアナログデータを長時間保持するメモリ技術を開発、AIの推論演算を圧倒的な低電力で実行できるComputing in Memoryチップに応用へ ~東京ビッグサイトで開催されるSEMICON JAPANで技術内容を発表~
株式会社フローディア(本社:東京都小平市、代表取締役社長:奥山幸祐、以下「フローディア」)は、自社開発した1セル当たり7ビットを記録できるフラッシュメモリの試作チップにおいて、メモリセルの構造及び制御方法を工夫することで、150℃で10年間のアナログデータ保持が可能になることを確認しました。既存のメモリー構造では、電荷漏れによる特性の変化及びばらつきの問題が大きく、100秒間程度維持するのが限界でした。
フローディアは今回開発したメモリー技術をAI(人工知能)の推論演算を圧倒的な低消費電力で実現するチップに応用します。このチップは不揮発性メモリーにニューラルネットワークの重みを記憶し、このメモリーアレイに電流を流すことで多数の積和演算を並列に実行する、Computing in Memory(CiM)と呼ぶ仕組みに基づくものです。CiMは、メモリーから大量のデータを読み出しCPUやGPUで積和演算を行う一般的なAIアクセラレーターに比べて大幅に消費電力が抑えられることから、エッジコンピューティング環境向けのAIアクセラレーターとして世界的に注目を集めています。
今回開発したメモリー技術は、フローディアがマイコンなどへの集積向けに開発したSONOS型フラッシュメモリをベースとしたもので、7ビット格納時にデータ保持時間を延長するために絶縁膜の構成を最適化するといった工夫を加えています。二つのセルを組み合わせることでニューラルネットワークの重みを最大8ビット記憶でき、小さなチップ面積ながら300TOPS/Wと既存のAIアクセラレーターをはるかに凌ぐ単位消費電力当たりの積和演算性能を実現可能です。
本技術の内容は、2021年12月15日~17日に東京ビッグサイトで開催される「SEMICON JAPAN」のブース(小間番号1746)において展示するほか、弊社CTOの谷口が12月15日11:15から「TechSTAGE」にて講演を行い説明します。
【 株式会社フローディアについて 】
日立製作所やルネサステクノロジ(現ルネサスエレクトロニクス)で、組込み型不揮発性メモリーを20年以上にわたり開発していた経験豊富なエンジニア達が独立して2011年に設立しました。マイコン、パワー半導体、センサー等に使われる、組込み型の不揮発性(電源を切っても記憶内容を維持する)メモリー製造に必要な工程や回路設計を、知的財産(IP)として半導体メーカーにライセンス提供する事業を展開しています。当社の不揮発性メモリー技術は、競合他社のメモリー技術に比べて、データの書込み・消去時の消費電力が100万分の1と極めて低い上、耐熱性に優れ、チップへの集積に必要な追加コストを1/3程度にまで低減できるといった特徴があります。こうした特徴からすでに国内半導体メーカーの車載用マイコンに搭載されている他、台湾のファウンドリにも採用され、このファウンドリが製造するスマートフォン用部品の組込メモリーとして利用されています。